伝統を支えるのは手間ひまかけて育てた京野菜

 

京野菜というと水菜や壬生菜などが知られていますが、私のとこではそのほかに九条葱、山科唐辛子、賀茂ナス、水ナス、それに最近作る人が少なくなりましたが、春菊の一種で葉っぱにギザギザのない大葉春菊(おたふく菜)というものも作っています。畑は2カ所、合計して2反歩半程あって、結構たくさんの種類の野菜を夫婦二人で育てています。

こうして作った野菜は半分以上を市場に出荷しています。冬は週1回、夏場は週2回、市内を回ってご家庭のお得意さんに小売りをしますし、料理屋さんは京だけでなく、京野菜を必要としている東京や福岡の京料理屋さんに直接お届けしています。

 

野菜作りのコツはそれぞれの種類にあった肥料を選んで、うまいぐあいに考えて与えることです。人間でいうと、ビタミン類を上手に利用して健康に育てるみたいなものでしょうね。

育てるというと、愚痴を言って畑に入ったら絶対あきません。いっぺん主人が愚痴を言いながらキュウリを切りに行ったら、まともなのがなくてほんまに曲がったキュウリが多かったんです。きれいなキュウリになってなあ、ありがとうなって言ったら、案外スラッとしたキュウリがなります。そらもう、野菜自体も聞いているんですわ。やっぱり、畑にも感謝して入らんとあかんやね。(いよさん談)

それから土作りですね。植木の手入れの葉っぱを細かく切って、おからやパンのくず、米ぬかを混ぜて発酵させた有機肥料を、毎年夏野菜の植え付け前にJAで購入して、大体3月頃に畑の畝の上に撒いて土と混ぜるんです。量は2トントラックで3台ぐらいです。そのとき、一緒に他の肥料も畝に撒いてトラクターでかき混ぜると、空気が土の中に入って土がふんわりとなるんです。これが野菜作りに欠かせないですね。

後は水ですけれど、VIPが我が家に付いたのが平成14年で、その1年後にPC-03を使うようになりました。
この辺の農業用水は山からの水と琵琶湖から流れてくる琵琶湖疎水を使っていますけれど、昭和40年頃から山科の都市化が進み、疎水に生活雑排水が流れ込んで汚れてきたのです。今は下水が完備していますから少しは良くなってきましたが、やっぱり昔ほど良い水じゃないです。そこで畑のそばを流れる疎水をポンプでくみ上げ、PC-03を通した水を畑に撒きます。冬はそれほどでもないですが、夏場になると毎日夕方に2〜3時間かけて野菜の畝の肩にパイプを通して撒いています。

それから無農薬での野菜作りですが、やはり商品としての価値を考えると減農薬はできても完全無農薬は自分の場合、むずかしいですよ。でも滋賀のほうにある水田は次男に任してあるのですが、農薬嫌いで畑は草ぼうぼうでした。農薬を使わないで採れたら、その方がいいですけどね。私の言うことを聞かず、自分の農業をやると言っていろいろやっていますから、息子の代になったらもっと回帰水を上手に利用して、無農薬の野菜を作ってくれるかもしれません。

2009年06月07日