平成25年10月、宮崎県日向地方に組合「匠の食卓 アソシエ」が誕生しました。コアメンバーは、畜産コンサルタントの山口英次さん、畜産農家の河野和央さん、養鶏農家の前田正彦さん、地元で評判の惣菜店「かんかん屋」を営む岩本道徳さんの4人。
組合の目的は各々の手がけている農畜産物をお互いにアイデアを出し合って販売していこうというもの。更に組合員の商品をセットにしてブランド化し、全国に流通させたいという大きな夢もあります。いうまでもないことですが、その根底にあるのは安全・安心な食品を消費者の食卓に届けたいという、生産者としての責任と自負。そして、その目的を支え、メンバーを結びつけているもうひとつの絆が『回帰水』というわけです。
苦い思いを飛躍のバネに
コアメンバーの中でも一番若い岩本さんは、若さならではのフットワークの良さと気さくさで組合の世話人的存在。皆から「ミッチャン」「ミッチャン」と頼りにされています。回帰水を伝えたのも岩本さん。回帰水とのおつきあいを聞いたところ「古いですよ。両親がすでにエージェントでしたから、子どもの頃からですね」
「かんかん屋」さんは製造から販売まで岩本さんと奥様、息子さんの家族で切り盛りする手づくりお惣菜の店。絵の得意な奥様のユニークなイラストの看板が目印です。メニューはカラ揚げ、コロッケ、メンチなど…ともかく「ウマイ!! デカイ!!」と評判。オリジナルの手羽先ギョウザはあちこちのお祭りやイベントなどでも引っぱりだこの人気者です。揚げもの以外にもハムやベーコン、スモークレバー、チキンハムと食肉加工品がいろとりどり。岩本さんはアイデアマンで、次々と商品の開発に取り組み、最近のヒットは『ぶたのしっぽ』。名前のとおり豚の尻尾をぶつ切りにして加熱したもので、モチモチ、ムチムチ、コラーゲンたっぷり。
自家工場での調理にはすべて回帰水を使用しており、素材はもとより調味料などもすべて回帰水処理しています。味のベースはもちろん回帰水で、ハムやベーコンなども塩分を極力抑えることができ、発色剤や保存料などを0に近くしても品質保持ができるのは回帰水がカバーしてくれているからと言います。工場の壁にレシピのメモがたくさん貼られているのも岩本さんらしく、頼もしいかぎりです。
元気はつらつ、新たに「日向ホールフード」という会社も立ちあげた岩本さん。でも、今日までの道程は決して順風満帆ではありませんでした。
松阪や神戸同様、宮崎もまた宮崎牛というブランド肉を持つ地域ですが、平成13年に流行したBSE(狂牛病)、平成22年の口蹄疫と大打撃を受け、特に口蹄疫は宮崎が流行の中心だったこともあって、地域全体の畜産が壊滅的な被害を受けました。ご両親の代から精肉店を営んでいた岩本さんもその影響で精肉から手を引かざるをえなくなり、若い頃に勉強してハム・ソーセージのマイスターの資格を持っていたことを生かして食肉加工や惣菜へと転身したのだそうです。
最近でも豚のかかるPED(流行性腸炎)や鶏インフルエンザなど、大陸に近いこともあって九州の畜産は常に脅威にさらされています。より食の安全性にこだわらなければ……というのが岩本さんばかりでなく「匠の食卓」メンバー全員の思いなのです。
美味しく、安全・安心な牛肉を
「実のところ、回帰水は牛にはタブーなんだよ」と、エッ?と思うようなことを口にするのは河野さん。
河野さんの名前に記憶のあるGPメンバーさんもいるかもしれません。今年春に回帰水で育てた『回帰トロン牛』の限定販売がありましたが、その牛を育てたのが河野さんです。蔓牛という特定地方に限定的に飼われてきた血縁関係の高い牛群を育てる研究をしたり、さまざまなチャレンジを続けているユニークな畜産家です。
牛肉はいわゆるサシのたくさん入った霜降り肉が高級品とされています。ところが回帰水を飲ませると「約1週間で脂がぬけてしまう」と河野さん。脂の入り具合、「キメしまり」というそうですが脂の状態などを見て牛肉は5ランクに分類されます。せっかく出荷しても、回帰水育ちではA5といった最上級ランクは絶対にとれないのだそうです。これでは生産者が二の足を踏んでしまうのも当然のこと……ですが、河野さんは更に「霜降りというのは牛がメタボになった状態。決して健康的な牛ではないんだ」。メタボな牛が美味しいといって食べる人間をメタボにする連鎖は皮肉なものです。
健康的で美味しい肉はつくれないものなのでしょうか?そこで挑戦したのが河野さんや岩本さんのグループです。河野さんは岩本さんのすすめもあって平成25年2月に回帰水を導入しましたが、3ヵ月ほどで牛が変わってきたそうです。まず牛舎の臭いが激減したことからはじまり、牛の毛艶が良くなり、汚れやハエ・蚊などがつきにくくなり更に食欲も旺盛になりました。仔牛を出荷できるまで育てるには30〜32ヵ月もかかりますが、仔牛の成長が非常に早く、病気にもかかりにくいなど、本当に健康的に育つようになったのです。以前から頭に腫瘍があった牛や、目の見えない牛がいましたが、回帰水を飲ませるようになってから、腫瘍が消え目も見えるようになったという話には驚きました。
さて、その味の問題ですが、試食させていただいたところ——河野さんの奥様が、なんと軽く表面をあぶった肉を握りすしにしてくれました——あっさりしているのに後味が深く、まさに滋味というか、赤味はこんなにも美味しいものだったかと感動!! また内臓もさっぱりしていて日持ちするのも回帰水の影響だろうとのこと。それでも市場では高値はつかないそうですから、安全・安心で良質な食のために消費者の側からも声をあげていかねばと思います。 通常、畜産家は仔牛を購入して育てるのですが、河野さんは自分で飼育したメス牛に仔を産ませ育てていくことを試みています。回帰水ベイビーの牛がどのように育つか楽しみです。
養鶏の前田さんは、まだ回帰水を導入して日が浅いのですが、まず鶏舎の臭いが減り、卵も固有の生ぐさみが減ったように感じるとのことでした。実は養鶏所の取材というのは断られるのが普通です。何故ならどこも、とても臭いがキツく、長いこといられないというのが実情なのですが、前田さんの鶏舎ではそんなことがありませんでした。これから回帰水がどんなパワーを発揮してくれるか「匠の食卓」のメンバーも注目しています。
幅広いネットワークで総合的な食の「匠」へ
紹介が最後になりましたが、山口さんはもともと県庁の畜産課に勤務しており、県内の畜産農家の指導をしていた方です。退職されて現在、数軒の畜産農家のコンサルティングにあたり、飼料などの開発に取り組んでいます。組合全体の参謀というところですが、地域の特産である柚子の畑を持ち、息子さんが回帰水を使って柚子を育てています。その果実を味噌やジャムなどの加工品としても生かそうと計画中とのこと。
農産物といえば宮崎県は日向夏や金柑などの柑橘類が有名ですが、日向地方には特有の「ヘベス」という種類があります。「かんかん屋」さんでは、他地方ではあまり知られていないこのヘベスでぽん酢を作り販売しています。地元消費だけではもったいない逸品です。また河野さんの仲間にはスイートピーなどの花卉やマンゴー、ライチなどの果物を栽培している人も……畜産にとらわれず「食と植」のネットワークが広がり、「匠の食卓」がより多彩になってくれればと思います。
農家経営のコンサルティングから飼料・肥料作り、生産、加工、販売と、川上から川下まで一貫した流れの「匠の食卓 アソシエ」。その回帰水の流れが大きく太く、周囲を潤す豊かな大河となってくれる日が、一消費者としても待たれます。