グローバルな視点からもさまざまな問題が提示され、注目を集めている「農」の分野。地域の活性化と振興に役立つことを目指して、農業に取り組む大企業も増えてきています。
岡本土石工業株式会社もそんな志をもつ企業のひとつですが、地域に精通した地元企業ならではのきめ細かな対応が他と大きく異なる点です。社名が表すように岡本土石工業は、砂利・砂・砕石・生コンクリートの生産・販売を主とする企業。会社のある紀の国・熊野地方は良質の砂利層を有する地域で、昔からその採掘が盛んに行われていましたが、土木・建築に欠かせない砂利という地下資源を採掘する過程で、高齢化が進み休耕地となっている多くの田畑や果樹園を目の当たりにすることに…。
地主さんから土地の管理の相談を受けたり、土地の再利用を頼まれたりといったことが重なり、それならばいっそ自社で、と農業事業部を発足させ、本格的に取り組むことになりました。そこで活躍するのが、ほかならぬ『回帰水』——。
ゼロから積み上げていく苦労に応えてくれた結果
土石業と農業、一見無関係のようにも思えますが、「自然や大地が相手の仕事で、そこから恩恵を受けているという点では同じ」と、岡本土石工業の岩田専務。
『この地で仕事をさせてもらっている以上、なんとか地域に貢献したい』という思いもあり、周囲からの相談や依頼が重なるにつれ、「感謝の心、奉仕の心というのが我が社の行動指針でもありますからね。産業として軌道に乗れば、新たな雇用も創出できますし」とはいえ、農業を取り巻く環境は決してやさしいものではありません。
単に農産物をつくったり加工するのではなく、市場で競争力をもつには付加価値をつけて他との差別化を図らなければならないのです。そこで得た結論が、『回帰水』を使っての栽培・加工。
ともかく発足させた農業事業部でしたが、農業に関してはみな全くの素人。まずは人材の育成から、と現場を統括する社員を1名、農業大学に研修生として留学させ、10年後の黒字計上を目指して長期計画で臨むことに。「期待を一身に背負い、誇りに思うと同時にプレッシャーでした」と、研修生に抜擢された藤川秀生さん。
1年間の研修から戻って手がけたのが、回帰水を利用しての野菜と果物の栽培です。野菜はハウスでの水耕栽培と土耕栽培とを半々にし、水源は周囲の川の水に求めることに。水耕栽培では約600平米のスペースにチンゲン菜やフリルレタス、小松菜など10種類程度の葉野菜を。回帰水を使うことで根の張りがしっかりし、害虫の付きも少なく、葉は色が濃くてやわらかい。収穫後に霧吹きで回帰水をかけて出荷することでより新鮮さが長持ちするため、消費者からの評判も上々です。
一方、土耕栽培ではじゃがいも・大根・玉ねぎ・ブロッコリーなどの、根菜や結実する野菜を栽培。当初は露地栽培でしたが、なにせ自然豊かな土地のこと、鳥や猿、猪に作物を荒らされるため、やむなくハウス栽培に。「これが暑くてね。夏には朝でも40℃を超えるんで難儀しました。葉があまり成長しなくて。でも回帰水のおかげで暑い間は根をしっかり張らせて耐え、そのぶん涼しくなってからぐんぐん伸びてきました」と改めて回帰水パワーを実感。「味のほうも、甘みが増し、濃いしっかりしたものになってきました」
隣の棟で手がけているのは、高設ベンチ栽培のいちご。品種は2種類、中部以西に多く、長く大ぶりの実が特徴の「章姫」と、三重県独自の開発品種「かおりの」で、計4100株ほど。「かおりの」は名のとおり香りが高く、実がしっかりしていて傷みにくく、糖度が13という高さ。ちょうど、熟年の方が収穫作業をしていましたが、培地が高めに設置されているのでかがむ必要がなく、体への負担が少ないのも嬉しいところ。培地の中に巡らせたパイプから自動的に給水が行われますが、時間や回数はコンピューターで管理され、日々チェックして設定し直しています。
果実王国にふさわしく
紀州は一年中温暖な地とあって、ご存じのようにみかんの名産地。農業事業部のある御浜町では「一年中みかんのとれる町」というキャッチフレーズを謳っているほどで、岡本土石工業でも柑橘類の栽培に取り組んでいます。温州みかん、デコポン、セミノール種など4ヘクタールに約600本で、こちらへの水まきは1日1回。回帰水を使うようになって黒点病にかかるものが減り、果実の甘みも増してきました。今年からはマイヤー種のレモンも栽培計画に加わりましたが「規模が拡大すれば収穫要員が問題になります。樹のオーナー制度を設定したり、近隣に障害者の施設があるのですが、そこのみなさんに収穫を手伝っていただこうか、などいろいろ考えています」
消費者とのより良い関係づくりにもチャレンジ
こうしてできた作物は、地域の公設市場のほか私設の直売所「やまじ採れたて市」へ出荷し、また希望する社員向けに社内販売も行っています。
特に藤川さんが注目しているのは直売所。住宅エリアにありますが、車を日常の足にしている地域住民にとって不都合はなく、いちごなど日に80パックは売れるとか。
野外の一角に設けられた34の棚に、地域の農家が持ち寄った商品がズラリと並びます。出品する棚は農家ごとに決まっており、それぞれにメッセージ付きのボードで出品者の名のほか商品の特徴や食べ方などをアピールできるようになっています。「客にとっては安価で生産者を選んで買える自由があり、生産者にとっては、どういう物が好まれるのかリサーチできるという、互いのメリットがあるんです」
農業事業部はまだうぶ声を挙げたばかりですが、回帰水の実力を日々実感している藤川さんは「農産物はもちろん、それらを加工した食品も、回帰水ブランドの商品として、ここから全国に発信していきたいですね」と、熱く意気込みを語ります。
他の分野にも回帰水のパワーを
回帰水への評価が高まるにつれ、岡本土石工業では農業以外の分野でも回帰水を使用することに。本業ではコンクリートを練り上げるのに回帰水を導入、建設中の橋に使うことが決定しました。また、関連事業のひとつであるゴルフ場「日本ダイヤモンドゴルフ倶楽部」や練習場にも導入し、現場からは嬉しい報告が上がってきています。特に、ゴルフ場では厨房でVIPとMAX2000を使っているほか浴場にラドニカを設置。飲料水も含め、水源には裏手の沢の水を使用していますが、ここに特注のセラミックパイプを設置して濾過し、二重の構えで臨んでいます。
期待を担って日々前進
回帰水を飛躍へのバネとして基軸に据えた農業事業部の10年後に期待するとともに、農業がきっかけとなって他の分野にも波及していった回帰水のパワー。3月には高速道路の延長路線も開通し、名古屋から約3時間とアクセスも改善した今日、事業部としてはほかにも、観光農園や農地付き宿泊施設の建設・運営、定年退職者や近隣施設の障害者の雇用機会の創出など、さらなる可能性を模索中とのこと。今後、どんなビジネスへの可能性が開けるか、大いに楽しみです。
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農事組合法人 熊野キノコ生産組合
ところで、果樹や野菜の肥料の一部として、収穫後のなめこの菌床が利用されています。これを供給しているのが「農事組合法人 熊野キノコ生産組合」。岡本土石工業の関連企業で、農業事業部と連携し、回帰水を利用してなめこの栽培から販売までを行っています。シイなどの広葉樹を利用したおがくずに肥料を混ぜた菌床で育て、収穫後に真空パックで商品化し、愛知、関西方面へ出荷。昨年、「三重県の安心食材」の認定を取得し、品質へのお墨付きも得ました。菌床となるおがくずを栄養剤と合わせてかくはんしたり殺菌したり、菌床表面を削ったり、収穫後のなめこを洗浄したりするなど、1日の水の使用量は約1トン。回帰水を使うようになってからは「なめこが日持ちするようになった」「水道の蛇口のぬめりがとれ、衛生面が向上した」との声がスタッフから聞かれ、今では欠かせない存在になっています。
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