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南阿蘇鉄道　長陽駅舎カフェ　久永屋～回帰水使用の店～

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のどかで美しい村がある日……

阿蘇の外輪山を望む稲田は実りの色をまとい始め、彼岸花の鮮やかな赤が目にしみる……南阿蘇鉄道長陽駅のホームに立つと、のどかな眺めにほっと一息、思わず深呼吸。何事もなかったような穏やかな日本の田園風景ですが、この地方を襲った大地震の被害は大きく、あちこちに傷跡が残っています。この長陽駅も例外ではありません。立野から高森を結ぶ南阿蘇鉄道は、春から秋の週末やゴールデンウィーク、夏休みなどに走るトロッコ列車が人気のラインですが、今だに半分以上が不通。復旧のめども立っておらず、レールはすっかり錆び付いています。

乗降客が途絶えたはずの長陽駅に賑やかな人の気配がありました。駅舎内のカフェ「久永屋」さんです。

「資本ケーキ」ってどんな味？

佐賀県出身の久永操さんが、ここにカフェを開いたのは10年程前。友人の父上が南阿蘇鉄道の中松駅でそば屋を開いていた縁で「駅っていいな」と。当時無人駅だった長陽駅のひなびた駅舎を見てすっかり気に入ったそうです。カフェの店長と同時に駅の管理人も兼ねる久永さんの肩書は、ちょっとオカタク「管理駅長」。カフェの営業は土曜・日曜・祝日。平日はお気に入りの赤いミニクーパーで注文のケーキを配達したり、そこかしこでこの地方の言葉で、さるき売りと呼ばれる行商をしています。

人気は「資本ケーキ」と名付けられたシフォンケーキ。インパクトのある名前ですが、フワフワとやさしく、どこか懐かしい味。シフォンケーキやマフィンを焼くことから、カフェメニューの盛り付け、飲物作りまですべて自分でするという久永さん。ケーキ作りをどこで学ばれたのか、何故シフォンケーキなのか、たずねてみました。

母がケーキ作りが好きで、手作りケーキで育ったんです。だからケーキは家で自分で作るものと思っていましたし、兄が天然酵母を使うパン屋をしていることもあって、店を手伝いながらケーキ作りを覚えました。その後、アメリカへ留学したのですが、ホストファミリーがクリスチャンで日曜日には必ず教会のミサに出かける、そんな時にケーキやクッキーを作って持って行くとすごく喜ばれるんです。ああ、お菓子ってこんなふうに人を喜ばせることが出来るんだなぁ…って。

特にシフォンケーキはアットホームな感じが好きですし、色々とアレンジ出来るのも楽しいですね。シンプルなお菓子だからこそ素材にはこだわって、保存料や添加物は一切無し。良い材料であればおいしく出来ると信じて、子どもからお年寄りまで安心して食べられることを第一にしています。「資本ケーキ」という名前も冗談みたいですけれど、覚えてもらうにはユニークな方がいいでしょう。

深まったきずなは明日への資本

日常も非常時も頼れる回帰水

ところで久永さんは一家揃っての回帰水ファン。「資本ケーキ」に使われていることはもちろん、ケーキのベース以外にもカフェで出す飲み水、コーヒーや紅茶といった飲物もすべて回帰水で。フルーツなど生で食べる物には回帰水処理を欠かしません。回帰水があるからかき氷も安心して出せるそうです。回帰水を使うとケーキがまろやかに仕上がり、日持ちも良くなるのが最初は不思議だったと言います。

南阿蘇は水に恵まれた所ですが、それでも地震の後は湧き水も濁り、水質が悪くなってしまいました。そんな時でもＶＩＰを通せば安心して飲めましたから、本当にありがたかったですね。もっともフィルターの汚れ方はすごかったですよ。あっという間に茶色になりました。

「資本ケーキ」を復興の資本に

築90年余になる駅舎は大地震にも耐えて大きな被害はなかったものの、食器が壊れたり、自宅にも被害があったりでカフェはやむなく休業。地震後ひと月程経った５月末に再オープンしたのですが、周囲の状況を見ると店を開けることにためらいがあったと久永さんは言います。再開を後押ししたのは近所の子ども達や常連さんから送られたハガキや手紙。皆が必要としている憩いの場を提供しようと再開に踏み切りました。

地元の人々は一日も早く立ち直って日常を取り戻そうとがんばっています。そんな中で「資本ケーキ」が復興のきっかけとして役立ってくれればと思います。確かにフリーのお客様は減りましたが、熱い思いで来てくださる方は大勢います。休業中のお店や宿が、自分のお客様を営業している所に紹介したり、地域のきずなは以前より深まった感じです。復興を単なる復旧にせずに、前よりも良い村にしていこうという思いに村全体が結束しています。僕も今まで地元の人々に助けられてきましたから、地域への恩返しの気持ちを込めて「資本ケーキ」を焼いているんです。