〔豆菓子 六田旭豆〕堤 徳昭さん~老舗の「今」を支える回帰水~

 

「もう、辞めようかと思っていたんですよ」。開口一番、ご主人の堤徳昭さんの思いもよらぬ言葉でした。大正元年創業の六田旭豆本舗、百年余の歴史を持つ老舗です。初代が金平糖をルーツに考案した「六田旭豆」は、えんどう豆を生姜の風味を生かした蜜汁で被って(りんかけ)乾燥させた、カリッとした食感の豆菓子。佐賀名物としても有名で、全菓博の金賞を受賞しており、地元では知らない人はいないほどのソウルフードです。長く愛され続けてきた味なのに「なぜ?」と問うと、「年々、豆の質が悪くなって。製造工程でのロスはしかたないんだが、それが増えて場合によっては半分以上も使いものにならない。これでは豆がかわいそうだよ。以前から息子達にも跡を継げとは言ってこなかったし……」と。

そんな父親の気持ちを弟の啓治さんから聞いた長男の宗隆さん。せっかく三代も続いた家業を辞めるのはもったいないと、家族で相談した結果、豆の選別という一番大事な作業で徳昭さんの眼鏡にかなった次男の啓治さんが跡を継ぐことに。ちょうどその頃、宗隆さんにも大きな変化がありました。それまでずっとアトピーに悩まされ、病院通いをしていたのですが、知人から『回帰水』を紹介され、使ったところ痒みが治まるなど症状がみるみる改善。「このパワーは豆にも生かせる!」と思い「使ってみたら」と、実家に持参したのです。

 

職人気質の徳昭さんのこと、最初はまったく取り合ってくれなかったのですが、お母さんのつや子さんが強い味方になってくれました。豆菓子に使う生姜を回帰水に浸けてみたのです。「浸けておいただけで、生姜の香りや味がぐ〜んと引き立って、この水はただ者ではないと思いました」。以来、徳昭さんも回帰水を使った「六田旭豆」づくりにチャレンジ。豆の汚れがよく落ちる反面、浸け過ぎると豆がはじけてダメになってしまう等々……「製法の変更も必要で、色々と試してみて何とか納得のゆくものになるまで2ヵ月ほどかかりました」。その結果は、生姜の風味が増しておいしく、食感も以前より軽く、堅いものが苦手になってきた高齢の方にも楽しんでもらえるようになったとか。

 

 

今までのキャリアを生かして、パッケージや製品コンセプトのアピールなどの面で、バックアップを続けてきた宗隆さんが商品バリエーションを増やそうと提案。日本初の五色豆、それも健康や安心安全を第一に、色は自然の素材から——まずは竹炭を練り込んだ黒い豆。やはり徳昭さんを説得するのは大変だったそうですが、何とか完成。徳昭さんの職人魂にも火がついたようで、その後、緑の抹茶味、黄の柚子味と次々に。赤は何で作ろうかと思案中とのことでしたが、この冊子が届く頃には出来上がっているかもしれません。

「変えるべきものと変えてはならないものがある。伝統とは不変と可変のバランスだと思うのです。まだまだ毎日が追求の段階ですよ」と徳昭さん。四代目として健闘中の啓治さんも、「最近、少しずつ商品を作らせてもらえるようになりました。父は自分の感覚のみで作っており、レシピなどありませんから見て覚えるしかない。でも、そのうち自分なりのものも作ってみたいですね」。ギフト用のパッケージも完成し、新たな市場へ意欲を燃やす若い世代。回帰水との出会いは老舗に活力ある明日をもたらしてくれたようです。

 

●佐賀県三養基郡みやき町大字市武869—4

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2017年10月29日