今年は例年にない大雪で、野菜、特に葉物が高騰しました。自然のものだから天候に左右されるのはしかたがない!? そこで私が始めたのは、一定の品質で計画的に生産する価格変動もない工場でのレタスづくりです。完全無農薬栽培で、外から遮断された密閉空間のため環境汚染や虫のつく心配は無用、安心して食べられますよ。
長年機械加工工場を経営してきて、62歳で次代に渡し、悠々自適の生活。だったんですが……友人と国内外へ旅行もしたし、好きな時にゴルフもできる。でも、ただ消費するだけの生活に、どうも物足りなさを感じてしまって。一方、かつて使っていた工場の一つが空いていたので有効利用したいな、とも。で、せっかくモノをつくるなら、広く皆さんに喜んでもらえる商品を、と模索した結果がレタスでした。
コンピュータ管理で、一定の生育環境・品質を実現
種まきから収穫までは約1ヵ月強。その各工程をライン化し、工程に合わせて培地のパネルごと場所を移動させていきます。栽培方法は、根元に養液を噴霧して育てる噴霧式。室内は温度、湿度、照度、養液濃度などをコンピュータで管理し、一定の生育条件を保持。
衛生管理、殺菌の徹底により、洗わずにそのまま食べられ、最後の工程でエグ味の原因となる硝酸値を下げる養液を噴霧しているので、食べやすいのも特長です。これらの養液に使っているのが「無農薬号」を通した『回帰水』。水耕栽培だけに、水はとても重要ですからね。
養液タンクへの注水を水道水にも切り替えられるようにして試してみたところ、育苗の段階で差が! 水道水に比べ、アオコの発生が頻度・量とも明らかに少ないんです。排水口にマグネシウムの石を置いて循環させていますが『回帰水』との相乗効果なんでしょうね、とにかく水が汚れない。環境面でも助かっています。
去年7月に稼動させたばかりですが、「日持ちがする」「歯応えがあるのにやわらかい」「2歳の子どもも喜んで食べる」など、おかげで反応は上々です。宅配もできるので、多くの方に食べてほしいですね。
今後の課題は、人工透析をしている人でも食べられる低カリウムレタスの生産。病気でも食の楽しみを味わってほしいですもんね。鍵は養液にありますが、実現は難しい。そして、もうひとつ。併設の直売所を含め、ここを「道の駅」みたいな観光施設にしていきたいんです。工場見学もできるし、レタスのほかに地産の商品を揃えて買い物が楽しめるような場にね。どちらも試行錯誤の連続ですが、諦めませんよ。これが私の社会への恩返しだと思っています。
(株)大泉野菜工房
群馬県邑楽郡大泉町坂田3-1‐40
TEL(0276)55‐0483